EPSONの業務用フォトプリンタ「SL-D700」を導入した話

弊社は撮影機材の輸入小売とともに、沖縄県内での撮影事業も行っております。昔ながらのお祝い写真や企業・団体様の集合写真等、「プリント」を前提とする案件がほとんどで、データ納品はおまけです。
プリントは先代から付き合いのある地元老舗ラボにお任せしていたのですが、昨今のプリント需要の低下や写真館の減少も手伝い、惜しまれつつ閉店してしまいました。まあ、デジタルになってからカメラマンが画像を直接確認できるようになり、プリントの色が画面の色と違う事をラボのせいにしてくる写真屋が続出で嫌になっちゃった、という話も聞いたり聞かなかったりですが、それは置いておきましょう。ややこしくなってくるので。
一時期はネットプリントを試していたのですが自身の業務形態に合わず悩んでいました。そんな時に出会ったのが「EPSON SL-D700」。導入検討中の方にとって、参考になる体験談であれば幸いです。
※言うときますと、EPSONさんからは何も貰っていないです。下さい。

EPSON SL-D700

「最近のドライ機は凄いらしい」 この目で確かめる

取引先の営業さんより「業務用フォトプリンターの性能が凄い」と言うのは伺っていました。ちょうどその頃当社では、コストや納期などの面からネットプリントの使いにくさを感じるようになってきました。納品後の追加注文がありがちな集合写真等の場合、発注が細切れになって配送コストや経理面での煩雑さが気になるのです。そんな時、EPSONの担当者が来沖するとの情報を入手。なんとか都合をつけていただき、お話を伺うことが出来ました。

「業務向け」フォトプリンターの主なラインナップは2種類。業務用フォトプリンターとしての「EPSON SL-D700」とラボ向けの「SL-D3000」。銀塩プリントに対して”ドライ”と呼ばれるインクジェットタイプのプリンタです。家庭用やアート用と異なり、専用ロール紙へのプリントとドライヤーの装備で圧倒的な高速印刷と安定性が特徴です。
目の前に広げられたサンプル写真。何これ、ちょっと凄いんですけど。

ずるいぞ、EPSON

渋い男性、赤背景の白無垢など、オーセンティックな雰囲気のスタジオ写真のサンプルです。何よりも、素晴らしい解像感、階調に心底驚きました。
『これはSL-D3000(数百万円)で出力したものです』
買えるわけ無いだろラボじゃないぞ。
すると、素晴らしいサンプル写真の後ろからひょこっと出てきた別の写真。塗り絵かな?さっきと随分違うんですが。やはりSL-D700で出力したものだと聞いて、がっかりしました。でも、あまりにも違いすぎる。プリンタの違いというよりも入力(カメラ・レンズ)の違いのような気がしていたので確認してみました。
『数百万円(SL-D3000)のサンプルは、国内老舗スタジオにてPhase◯neで撮影したものです』
白状しやがったなこのやろう!違って当たり前です!この話は終わり!! 思わず()内が入れ替わってしまうくらいショックだわ。交渉決裂、ではないですが、そもそもSL-D3000は当社の規模にマッチしません。どちらにせよこのサンプルではSL-D700の実力を測りかねたので、沖縄で開催されるという体験会に応募しました。持ち込みデータを出力してガチンコ比較してみます。

体験会に参加。判子をギュッと握りしめる。

SL-D700、SL-D3000を体験。前者はレーザープリンタや登場初期のヘルシオくらいのサイズ感。後者は、1m四方の箱くらいのサイズ感です。(筆者主観) 持ち込みのデータを双方で出力してもらい比較。「A4以下のサイズ」「プリント速度」「画質・解像感」「印刷コスト」が当社条件かつ懸案次項です。出力する紙のサイズが異なるという残念な環境ではありましたが、自社の仕事においてはSL-D700が「必要十分な品質」を持っている事が確認できました。懸案事項は以下の通り解決。

  • サイズ:そもそも、A4サイズを超える商品が無いので問題なし。六切りワイドを超える注文はこれまで通り外注でOK。
  • プリント速度:プリント開始までに少し時間がかかるものの、印刷そのものは速い。高解像度では遅くなるが許容範囲内(L判 16秒/枚)
  • 画質/解像感:大集合やA4サイズの出力時を除いて、標準解像度(720x720dpi)でも必要十分。上位機のSL-D3000系統の性格を持った専用6色インクで色彩も豊か。

印刷コストについては明言はなかったものの「インク一本でL判何枚刷れるか」を聞き出し、エクセルさんに突っ込みコスト計算。全く無問題でした。
正直、サンプル写真みたいな出力だったら愛想笑いだけして帰ろうと思っていました。それが気がついたら判子握ってるんだから、上場企業は怖いですほんと。

購入から導入まで

取引先の問屋さん経由で購入。大型のパッケージではありますが、一般的な宅配業者さんによる配送です。沖縄まで1週間程度で到着しました。
本体は前述のようなサイズ感なので、成人男性なら一人でも特に問題なく設置が可能です。各種アクセス・排紙はプリンタ前方に集中しているので、プリンタ後方は30mm程度の隙間があればOKでした。電源端子、USB端子は後方なのでスペースに余裕があれば少し空けるか、キャスター付の台に載せると作業がしやすくなります。
当社はプリンタ本体と予備インクのみを購入。インストールも説明書や画面に従って進行すると特に問題なく終了します。導入サポートや延長保証のオプションがありますので、この点はお好みで。なお、本体にはデフォルトで1年の保証が付帯していますので、この保証が切れるまでに延長保証の必要性を判断しても良いかもしれません。

運用して気がついたこと色々

しばらく運用して、導入前の印象が確信に変わったり、逆に弱点に気がついたりと、新たな発見がありました。

【良いところ】
  • 基本性能(画質、出力速度、耐候性、コストパフォーマンス)
  • PhotoshopやLightroomから直接出力可能(専用アプリケーションが不要)
  • マット紙対応(SL-D700のみ)

▼導入時はカラー設定やらで戸惑いましたが、現在はすこぶる順調。紙のサイズや出力内容によって幾つかのプロファイルを使い分けています。
▼基本的にはLightroomのプリントモジュールからの直接出力なので、RAW現像を踏まえたワークフローとしては最短ルートでの運用が出来ていると思います。
▼紙はILFORDのパール(ラスター/半光沢)の3サイズ(127幅、152幅、210幅)を利用中。SL-D700はマット紙にも対応しているのも高得点です。
プリントの内製化が目的でしたが、最近は知り合いのカメラマンからのオーダーも受けるようになりました。

【悪いところ】
  • ネットワーク機能が無い
  • 稼働時ドライヤーがうるさい
  • 203幅ロールが無い
  • 専用ソフトと抱合せのPCが高すぎる
  • Macとの相性が微妙(な時もある。OSのバージョン注意)

▼ネットワーク機能が無いのは本当に面倒でした。サーバーを立ててやろうかと思いましたが、ド素人なのですぐに頓挫。今時プリンタがUSBポート埋めるってナンセンスですし、作業スペースのレイアウトにも大きな制限がでてしまう。この点は本当に不便です。
▼最初の稼働時に驚いたのはドライヤーの音が騒がしいこと。レーザープリンタの動作音よりうるさいです。そのおかげでインクの乾きを待つ必要は無いのですが。
▼SL-D700そのものは203幅のロール紙に対応しているのですが、肝心の「紙」が販売されていないという状況。六切りを出す場合には、210幅のロール紙に出力してカットするしかありません。当社では台紙や額に入れる場合が多くどちらにせよ中枠でトリミングされるため、大きな問題には至っていません。
▼専用のオーダーコントロールソフトがあるのですが、EPSONのPCと抱合せで3桁万円に届く金額でした。謎。インクビジネスよりひどいだろ。現在は必要機能に絞った「ライト版」のソフトのみを単品販売しています。流石に要望が多かったんでしょうね。
▼当社ではMacにSL-D700を直結して利用しています。最新バージョンのOSを搭載したMacに繋ぎ変えた途端、複数枚の印刷オーダーが無視されるトラブルが発生。1ヶ月ほどでドライバが更新されましたが、Macを利用している場合は相性問題に注意する必要があるかも知れません。

銀塩とドライ。SL-D700をおすすめしたい人

銀塩とドライ(インクジェット等)、何が違って何が良いの?という疑問があります。
大量プリントのコスト面では銀塩に分があるとのこと。廉価なネットプリントはほぼ銀塩だと思われます。
一方、スイッチONで(比較的)すぐに稼働できる即応性や耐候性、階調性といった部分については、ドライ機が圧倒的に優勢です。例えば、現在銀塩ラボ機を使っているというDPEショップさんなどは、SL-D3000は十分検討の範囲に入ってくるのでは無いでしょうか。
SL-D700は、店頭受付機と組み合わせたDPEショップでの使用も想定されていますが、弊社のように「プリントの内製化」を目的とする以下のような事業者さんにもおすすめです。

  • 小規模のプリント事業を内製化したい人
  • 中〜大量の写真プリントをする必要がある人
  • 急な注文に出来るだけ早く応えたい人
  • 銀塩以上の階調性を求める人
  • 初期導入費用を抑えたい人

ちなみに、「個展用の出力をしたい!」「様々な紙種で表現を楽しみたい!」とかなら、アート向けのインクジェットプリンタの方がオススメです。

1ヶ月絶たずにペイしたので2台目を買う

導入効果ですが、1ヶ月足らずで導入費をペイしてしまいました。バブルってあるんですね。ロール紙の交換が面倒になってきたし、SL-D700は耐用枚数10万枚(カッターがダメになるらしいです)の使い捨てなので、ちょっとでも長生きさせるために2台目を導入。こちらも割りと直ぐに投資分を回収できました。数十万円の投資には違いありませんが、継続的にプリント需要がある店舗さんにとっては良い選択肢だと思います。

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