初めてのストロボの使い方(モノブロックストロボ DII-200)

初めてのストロボの使い方
 
今まで撮影用の蛍光灯ライトで撮影していた方が、ストロボ撮影へステップアップされるケースが増えてきています。

また、撮影の経験がほとんど無い方でも、一眼レフカメラを含めリーズナブルな機材が増えてきた今日では、ストロボ撮影への敷居がかなり低くなったように感じます。

さて、ストロボを使用しての撮影のメリットですが、以下の点が挙げられるでしょう。

  • 小型のストロボでも大きな光量が得られる
  • 瞬間的な発光(数百分の1秒)で撮影するので、風になびく髪の毛や走り回る子どもなど、動きのある被写体の一瞬を切り取ることができる(被写体ブレがない)。
  • 瞬間的な発光(数百分の1秒)で撮影するので手ブレがしにくく、三脚を使用せずに手持ちで撮影できる。
  • 通常の蛍光灯ライトと比べて演色性が高いので、被写体の正確な色味を写真に再現できる。
  • アンブレラやソフトボックス、オパライト、スヌート、グリッド、カラーフィルターなど、様々なアクセサリーが用意されている。またそれらを使用することで光質をコントロールしやすく、幅広い表現が可能になる。
  • 大きな光量によりレンズの絞り値(F値:えふち)を大きくできるため、被写体深度の深い(奥までピントの合った)写真が撮れる(後述)。

こういった理由から、高品質な写真撮影が求められるプロのカメラマンはストロボを選択しています。

で、プロカメラマンではない方、特に撮影の経験があまりない方からよく聞かれるのは「ストロボは難しそう…」という声。

果たしてそうなのでしょうか??

そこで今回は『初めてのストロボの使い方』というテーマで、ストロボとカメラの「設定値」についてご紹介させていただきます。すみませんが、ストロボのアクセサリー(アンブレラやソフトボックス等)の選択やポジションなどは割愛しておりますので、本サイト記事「アパレル系シンプルライティング」などをご参考にしていただければと…

 

カメラとストロボの設定

まずはカメラとストロボの設定をしておきます。

★ストロボを発光させるためのカメラとストロボとの接続方法については[シンクロターミナルの無いカメラでストロボを使う]をご覧ください★

設定1:シャッタースピード(SS)

まずカメラの設定はマニュアルモード[M]にします。そしてシャッタースピード(以下、SS)は1/125秒に設定。このSS:1/125秒には意味があります。

これよりも早いSS、例えば1/500秒とかだと、シャッターの開いている時間にストロボ発光のタイミングがうまく合わせきれずに一部のみ明るい写真、または真っ暗な写真になってしまいます。
※これ↑についてはCanon様のページに関連情報があります。

また逆に長いSS、例えば1/30秒とかだと、ストロボ以外の光(室内の明かりとか窓からこぼれてくる光とか)が写真に強く影響してしまったりします(それが狙いなら別として)。

という訳で、とりあえずの1/125秒に設定しておきましょう。

設定2:絞り(F値:えふち)

続いては絞り、別名F値(えふち)です。絞りというのはレンズを通って撮像素子(光をデータ化する部分)に入ってくる光の量を調整すること、または調整する部分のことです(参照:Sony様のページ)。この絞りをいじることによって写真がどのように変わるかというと、写真の明るさと被写体深度(後述もしますが参照サイトもご覧ください:ニコン様)です。

  • 絞り(F値)が小さい:写真が明るくなる、背景がボケる。
  • 絞り(F値)が大きい:写真が暗くなる、背景がハッキリと写るようになる。

 *SSやISOが一定の場合

上記の絞りの特性により、ストロボ撮影時に写真の明るさを絞りで調整することは可能なのですが、その結果として被写体深度(ボケ具合)も変わってくることに注意しましょう。

という事で、お好みのボケ具合が決まっていればその絞り値に設定しておきます。まだその辺りが決まっていないようであれば、とりあえずF11くらいにしておきましょう。

設定3:ISO(感度)

ISOとは光に対する撮像素子の敏感さを数値化したものです。「イソ」「アイソ」「アイエスオー」と呼ばれています。感度を高くする(数字を大きくする)ことで暗い部屋も明るく撮影できたりしますが、画質が悪くなります(ノイズが多くなる)。

  • ISOが小さい:写真が暗くなる、ノイズが少なく画質が良い。
  • ISOが大きい:写真が明るくなる、ノイズが多く画質が悪くなる。

 *SSや絞りが一定の場合

このISOの性質を利用して、ストロボ撮影時にISOの数値を上下させることにより、写真の明るさを手元のカメラ側で変えることが可能です。しかしながら前述の通り、ISOの上げすぎは画質の劣化につながるので注意しましょう。カメラにもよりますが、エントリーモデルのカメラであればISO 1600くらいまでにしておいた方が無難です。

という訳で、撮影時に手元側で写真を明るくしたり暗くしたりするために、とりあえずはISO 400くらいにしておきましょう。

設定4:ストロボの出力(今回は『デリカシー200W アンブレラ基本セット』を使用)

最後にストロボの設定です。当然ですがストロボの出力を上げれば写真は明るくなり、出力を下げれば写真は暗くなります。

という訳で、これまた撮影時に写真を明るく、または暗くできるように、ストロボの出力を1/8ほどにしておきます。

以上、文章にすると長々となりますが、慣れれば1分もかからない作業ではないでしょうか?
さぁ、それでは実際に撮影してみましょう。

 

カメラ・ストロボの設定まとめ

上記のカメラの『シャッタースピード(SS)』、『絞り(F値:えふち)』、『ISO(感度)』および『ストロボの出力』による写真への影響を表にまとめてみます。

  小さくする 大きくする
シャッタースピード(SS)
※とりあえず今回は1/125秒で固定
小さく(短く)しすぎると、シャッターとストロボの発光のタイミングが合わなくなるのでNG(例外としてハイスピードシンクロという撮影方法はある)。 大きく(長く)しすぎると、ストロボ以外の光(室内の明かり等)が写真に写り込んでしまい、色のニゴリが生じる可能性がある。また手ブレや被写体ブレの原因となる。
絞り
(F値:えふち)
明るくなる。
但し、被写体深度(ピントの合う前後の範囲)が狭くなる。
つまりは背景がボケやすくなる。
暗くなる。
但し、被写体深度(ピントの合う前後の範囲)が広くなる。
つまりは背景までピントが合いやすくなる。
ISO
(感度)
暗くなる。 明るくなる。
但し、ISOを上げすぎると写真にノイズが多くなり、画質が悪くなる(画像を拡大すると顕著にわかる)。
ストロボの
出力
暗くなる。 明るくなる。

 

実際に撮ってから明るさを修正してみよう

各部のセッティングを終えたら、カメラを被写体に向けてシャッターを押してみましょう。撮影した写真を見て、ISO、ストロボの出力で明るさを修正していきます。

ISOで明るさを調整する

  小さくする 大きくする
ISO
(感度)
暗くなる。 明るくなる。
但し、ISOを上げすぎると写真にノイズが多くなり、画質が悪くなる(画像を拡大すると顕著にわかる)。

画像について

【撮影例1】
SS:1/125
絞り:11
ISO:400
ストロボ出力:1/8
まずは暗い写真となりました。これを程よい明るさ(適正露出)の写真にしていきます。

画像について

【撮影例2】
SS:1/125
絞り:11
ISO:800
ストロボ出力:1/8
1枚目に比べたら明るくなりましたが、まだ暗い写真です。

画像について

【撮影例3】
SS:1/125
絞り:11
ISO:1600
ストロボ出力:1/8
さてどうでしょうか? 程よい明るさの写真になったようです。


ストロボの出力で明るさを調整する

  小さくする 大きくする
ストロボの
出力
暗くなる。 明るくなる。

上記ではカメラ側のISO設定で明るさを調整しました。
これを今度はストロボの出力で調整してみます。

画像について

【撮影例4】
SS:1/125
絞り:11
ISO:400
ストロボ出力:1/8
撮影例1と同じ設定のため、同じように暗い写真となります。

画像について

【撮影例5】
SS:1/125
絞り:11
ISO:400
ストロボ出力:1/4
ストロボの出力を1/4(撮影例4の2倍)にしました。撮影例2と同じくらいの明るさになりました。

画像について

【撮影例6】
SS:1/125
絞り:11
ISO:400
ストロボ出力:1/2
ストロボの出力を1/2(撮影例5の2倍)にしました。撮影例3と同じくらいの程よい明るさになりました。


このように、ストロボ撮影での写真の明るさはカメラ側のISO設定、もしくはストロボ側の出力設定で調整が可能になります。わざわざ歩み寄ってストロボ側で調整するよりも、カメラ側で調整する方が楽ちんかもですね。

絞りと被写体深度について

  小さくする 大きくする
絞り
(F値:えふち)
明るくなる。
但し、被写体深度(ピントの合う前後の範囲)が狭くなる。
つまりは背景がボケやすくなる。
暗くなる。
但し、被写体深度(ピントの合う前後の範囲)が広くなる。
つまりは背景までピントが合いやすくなる。

ここでついでに絞りと被写体深度について。
先述の「設定2:絞り(F値)」でも触れましたが、絞りの数値を変えると、被写体深度(ボケ具合)が変わります。試しに撮影してみましょう(一番うしろに置いてある洋ナシのボケ具合に注目)。

画像について

【撮影例7】
SS:1/125
絞り:11
ISO:100
ストロボ出力:1/8
撮影例3と同じ設定です。最後尾の洋ナシのボケ具合にご注目を。

画像について

【撮影例8】
SS:1/125
絞り:8.0
ISO:100
ストロボ出力:1/16
絞りの数字を下げました。他の設定を変えなければ写真は明るくなりますが、ストロボの出力を下げて明るさを写真7と同程度にしています。洋ナシが少しボケてきました。

画像について

【撮影例9】
SS:1/125
絞り:5.6
ISO:100
ストロボ出力:1/32
絞りの数字を更に下げました。その分ストロボの出力もあわせて下げています。洋ナシがよりボケてきました。※エントリーモデルながら1/32まで絞れる、かつフル発光(200Ws)でチャージ1.5秒のストロボDII-200は、特に初心者の方にお薦めです。


といったように、絞りの数値を変えることで写真のボケ具合が変わっていくことをお分かりいただけたかと思います。もしボケ具合を気にしないような撮影であれば、写真の明るさを絞りで調整するのも当然アリです

最後に、【撮影例7】のカメラ設定で、あえてストロボを発光させないでシャッターを押した写真が次の【撮影例10】です。いかがでしょうか? 薄暗い撮影スタジオとは言え、人間の目では周りのものが普通に見える環境にも関わらず真っ暗の写真となりました。

画像について

【撮影例10】
SS:1/125
絞り:11
ISO:100
ストロボ:使用せず
撮影例7のカメラ設定で、ストロボを発光させずに室内の光のみで撮影した写真です。真っ黒ですが画像データの問題ではありません。室内の照明と比較してストロボ光が圧倒的に強いことがわかります。

画像について

左の写真【撮影例10】を含め今回の全ての撮影例は、人間の視覚的にだいたいこれくらいの明るさの環境で撮影しました。


この写真からわかることとして、

  • 室内の光(天井の蛍光灯など)と比較してストロボの光は圧倒的に強い
      ↓
  • ストロボの瞬間的な発光(数百分の1秒)のみで明るい写真が撮れる。
      ↓
  • 瞬間的な発光のみで写真を撮るので、動きのある被写体の一瞬を切り取ることができる。
  • 室内の光や窓からの光など、環境光に左右されにくいので、常に同じ品質(色味、明るさ)の写真撮影が可能になる

  *ストロボの出力等にもよります

ということになります。

撮影用の蛍光灯ライト等に比べ、アンブレラソフトボックスオパライトバーンドア、カラーフィルムなどなど、アクセサリーが豊富で幅広い表現が可能となる点もストロボの魅力であり、商業写真の世界でストロボが選ばれる理由でもあります。

ひとつ上の写真撮影をしてみたい方、ストロボにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

 

<当店取扱のストロボスペック一覧>
本記事でも紹介しているモノブロックストロボ『DII-200』など当店取扱製品のほか、他社製ストロボとのスペック一覧表はhttps://store.omnivas.jp/?mode=grp&gid=967338にてご覧いただけます。

 

 

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